VOCALOID小説サイト『黄昏の歌』の別館です。 健全な表と違い、こちらはBL・及びR指定腐向けです。 読んで気分を害されたなどのクレームはお受けできませんのでご了承ください。 閲覧は自己責任でお願いします
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「う、ん・・・」
じっとりとした湿度がまとわりつく蒸し暑い夜だった。
夢現の状態で自然と勇馬の手が着物を崩して風の入り口を作る。
肌蹴た胸元に多少生温かくても風が通れば多少は涼しい。
胸板の窪みに流れでた汗が溜まる。朝露のように不安定な所に浮かんだそれを細い舌が舐めとった。
「な、なにっ・・・!?」
明らかにペロリと舐め上がられる感触に勇馬が目を覚ました。
暗闇に目が慣れる前に、物音を立てずにさっと自分の体に何かがまとわりついてきた。
いったい何が・・・、逸る胸を落ち着かせるとその何かがゆっくりと顔を上げた。
顔を上げた美麗の男は怯える勇馬をなだめるように笑みを浮かべる。
「ハイサイ、チュラカーギー(こんばんは、美人さん)」
最初は人だと思ってホッとした勇馬だったが、すぐにその安堵は凍りついた。
見た目は美しい青年だが、見鬼である勇馬の目は誤魔化せない。美しい貌の向こうに見える本性は虹色の鱗を持った蛇だった。
「あ、あ、あ・・・」
マジムンだ、そう思って札が入った袂に手を伸ばそうとしたが、その前に絡みあうように足を絡ませて密着させていた事に気がついて愕然となった。
妖かしならこの札を貼っただけで嫌がって逃げていくのに、目の前の男は素知らぬ顔でニコニコと笑顔を絶やさない。
だが、しばらくすると貼り付けていた笑顔の仮面が剥がれ落ちた。
「・・・そうか。お前は私の正体が見えるのだな。残念だ」
至極気落ちしたようにため息をつく仕草も非常に色っぽい。かつて美女の魂を何人も抜いた悪行をしたと聞かされていたが、この色香に惑わされない女はいないのではないかと思うほど仕草一つ一つが美しかった。
だが、紡がれる言葉はそんな美しさとは無縁だった。
「せっかく久方ぶりに自ら泣いて請い願うまで私に夢中にさせて、その身も心もマブイ(魂)も私だけのものにしてやろうと思ったのに・・・」
「あ、あ、あ、悪霊退散!!」
ようやく取り出せた札を思い切り額に叩きつけた。
ところが、叩きつけた札は顔に触れた途端、文言を引き裂くように真っ二つに裂けた。
驚愕に目を見開く勇馬にマジムンはクスクス笑いながら額の札の成れの果てをはがすと、勇馬の手に握られていたもう一枚を手にとってひらひらと弄んだ。
「残念だが、この札は効果はないぞ。琉球は土着の神の力が強い。故に過去に何度か渡って来ようとした大和の神もいたが、結局琉球の土地神に抗えず去っていった。伝来できたのは偶像に魂を込められる仏くらいのものだ」
蝦夷地や琉球は大和と海を挟んで隔絶している。
故にその生活環境は大和のものとは大きく異なっているから、本土では当たり前に存在するものでも蝦夷や琉球ではお目にかかれないものも少なくない。
だからこそ、蝦夷と琉球では土着の神の力は強く本土の神の力は弱くなる。大和には至る所に存在する稲荷神社の社が琉球にないのもその為だ。
そして、アイヌやウチナンチュ(琉球人)は祖先神や土地神を深く信仰して事あるごとに祭礼や祈りを欠かさない。
祈りや祭り事によってその力を確立させることができる蝦夷と琉球の神々は、太古の昔の頃と変わらない力を継承し続けていた。
「別にこんな札、痛くも痒くもないが・・・、御嶽の壁全てにこれを貼られるのもいささか外見が悪い。せっかく貼ってくれたのはありがたいが、取らせてもらうぞ」
マジムンが小さく指を鳴らす。
途端に勇馬が御嶽の壁に貼り付けた札が全て木っ端微塵に破れた。
最早なんの効果ももたらさない紙くず同然の札は風に吹かれて飛び去ってしまう。
勇馬はそれを呆然と見送るしか術はなかった。
勇馬の札はそれなりの邪気払いはできる。だが、まさか触れもせずに木っ端微塵にされるとは・・・、今更ながらに琉球の神の力を思い知って震えが止まらない。
(逃げなくちゃ・・・)
今にも腰が抜けてしまいそうな足に何とか力を込めて、隙を見て逃げ出そうと思った。
しかし、そう考えた途端にマジムンはニヤリと笑って告げる。
「逃げられると思うなよ。私はお前が思うよりよっぽど早い。まあ、追いかけるのも嫌いじゃないが・・・」
「な、んで・・・」
まるで読み取ったかのように考えていた事を当てられて勇馬は愕然とした。
マジムンはその言葉に白けたように鼻で笑う。
「私の本性が見えるお前が随分と陳腐な事を聞くのだな。アカマターのマジムンであるならその性は本性に近いことはわかっているだろう」
なるほど、本性が蛇であるなら発汗や筋肉の僅かな動きで獲物がどういう行動に出るかたちどころに感知してしまう。
そして逃げ惑う獲物を音もなく追い、一撃で仕留めて捕食するのも蛇の本性にかなっている。
そこまで考えた勇馬はあることを思い出して顔を上げた。
昨夜、アカマター御嶽の近くで感じた視線。
外で粗相すると蛇が寄ってくると大和でも古くから言い伝えられている。その言い伝えの原本は「蛇婿」などの話に代表される異類婚姻譚だ。
「ま、まさか・・・」
嫌な予感に震えが止まらない。
その想像を肯定するようにマジムンは捕食者の目で勇馬を見据えたまま、舌なめずりをした。
「い、いやだっ!誰か・・・!!」
「無駄だ。私の御嶽の近くは祟りを恐れて誰も近づかない。来られるのは真茱萸の末である真百合だけだ」
泣き喚き、助けを求める勇馬に残酷な言葉が投げられる。
抵抗する手をものともせず、マジムンは慣れない衣装を引き剥がしにかかった。
袴を下ろすと剥きたての桃のように滑らかで甘い香りを放つ臀部が顕になった。
まだ生娘のような香りを放つ体は男女を知りえぬ体でしか持ち得ない。
それなりに霊力を宿す巫体はマジムンにとってこの上ないご馳走でもあった。
耐え切れず固く窄まった菊座に舌を伸ばす。
「ひいっ!!」
本来触れられることも自らが触れることも稀な場所を舐められるというおぞましい行為に勇馬は弓なりに身体を仰け反らせた。
先は細いが徐々に太く、それも人の子供の腕ほどもある舌は本性の双性の陰茎とはまた別の用途を持つマジムンのもう一つの陰茎だ。
舌の自由度は陰茎の比ではない。自由自在に意のままに意中の相手を蹂躙する舌は未知の快楽地獄に男も女も引きずり込んだ。
このマジムンが恐れられたのはそのセヂ(霊力)ではなく、あまりにも狡猾で恐ろしいほど色を好んだからにほかならない。
琉球王府が誕生し、祭礼と祈祷によって王族神が国を治めるようになるとノロ達が祈祷と呪術によってマジムンの動きを封じるようになった。果てはノロに縋れない庶民の中でもサダーカー生まれがノロの真似事で祈祷を行うようになった。これらユタの登場で琉球のマジムンは鳴りを潜めたのだが、このマジムンは例外だった。
美しければ男女問わず、大胆にもユタやノロ、ひどいときには王族の縁戚の姫君さえも毒牙にかけた。
美しく教養高い男に化けるこのマジムンは一瞬で狙う相手の心を奪い、この舌の陰茎で身も心も虜にした。
周りがおかしいと気づいた頃には手遅れで、しゃぶりつくすだけしゃぶり尽くしたマジムンは姿を消して、後に残されているのはマブイ(魂)落ちして廃人になった憐れな犠牲者だけだった。
「やだぁ・・・、もう、やめてぇ・・・、ごめんなさいぃ・・・」
「ククク、随分と可愛らしい声で鳴いてくれるな・・・」
執拗に前立腺を舐めあげてマジムンは満足そうに舌を震わせた。
舌の陰茎は相手の性感帯はもちろん、感度や締め付け具合や中の広さまで計ることができる便利さを兼ね備えている。
この青年はやはりまだ女を抱いたことのない穢れない身体の持ち主だった。しかし、それほど神聖な身体を持ち合わせているのには不釣り合いなほど、性的感度は非常に高く相性も悪くない。
過去に星の数ほど男も女も抱いたが、本当に相性の合う身体と魂を持つ者など百年に一人いるかどうかだった。
最後に現れたのは百年前、浅巡音川按司(貴族)の一人娘の姫君だった。頭脳明晰で容姿は人の分を超え、声は迦陵頻伽の如しとさえ謳われた絶世の美女だった。王の妃にとまで望まれた娘だったが、神に愛された美点を持ちすぎたこの娘をマジムンは見逃さなかった。
娘はもちろん、マジムンさえも互いに激しく惹かれ合い恋に落ちた。しかし、娘がマジムンに釣り合う身体と魂を持ち合わせていたのが悲劇の始まりだった。
親が娘を王の妃にしようと真茱萸ノロに吉日を占わせた所、真茱萸ノロはマジムンの存在、そして娘がマジムンの子を身ごもっていることを見抜いた。
娘は身ごもった子を堕ろすため、清明祭の日に海に無理やり禊させられた折に無数の卵を流したことで事切れた。そしてマジムンは真茱萸ノロによってアカマター御嶽に封じられた。せめてもの、愛した娘への餞としてヨーラーを払うことを約束して・・・。
「いやあっ!!」
勇馬の泣き叫ぶ声がマジムンを過去から引き戻した。
やはり魂が近いと面差しも似てくるものなのだろうか、マジムンは勇馬にかつての恋人の面影を視た。
同時に恋人を死なせた人間に対する激しい怒りと憎しみが沸き起こるのを感じた。
ずるり、とそれまで勇馬の中を蹂躙していた舌を引き戻して、代わりに普段体内にしまっている陰茎を取り出した。
普段は一方しか使わないが、本性が蛇であるマジムンは二つの陰茎を持ち合わせている。
本来蛇は栗の毬に似た刺が無数に備わっている陰茎で雄は雌の排卵を促すことで子を成す。
人の子をたぶらかして生殖に及ぶ際はこれが枷になって正体を露見してしまう蛇のマジムンも少なくない。彼は先に舌で感覚を麻痺させることで危険を回避してから事に及んだ。
この陰茎を同時に使ったのはやはり浅巡音川按司の娘の時だった。
娘は正体を知ってもなおマジムンを愛し、人外のもたらす快楽に溺れた。
男である勇馬は女と違って穴を一つしか持ち合わせていないが、やりようはいくらでもある。
「ひいっ・・・!!」
舌の比ではない二対の巨大な逸物に勇馬が目に見えて怯える。
歯の根が噛み合わずガチガチと音をたてて、祝詞を唱えることも叶わない。
舌でも何度もイかされて意識が飛んでしまいそうだったのに、あんな醜悪なもので貫かれては死んでしまうかも知れない。
「や、やだ・・・。お願い、やめて・・・」
「案ずるな。お前には適性があるからそう簡単には死なんよ」
「・・・人外の快楽を、教えてやろう」